城間医院ブログ

西原町の西原中学校向いにあるクリニックです。
昭和52年に精神科・心療内科のクリニックとして開院し、
平成28年4月からは内科診療も始めました。

 昨今、新型コロナウイルス感染症に加え、インフルエンザも増えてきております。当院ではインフルエンザ抗原検査のみを行っておりますが、かかりつけの方のみならず、一般の患者さんも受け入れております。
 尚、一般患者との動線を分離しないといけないので、感冒症状の方はすぐに建物内に入らずに、まずはお電話ください。そのうえで当院職員から案内があります。
 ご迷惑をおかけしますが宜しくお願いします。

 「肝臓は沈黙の臓器」と聞いたことはあるでしょうか。肝臓は栄養の貯蔵・代謝を行うだけでなくアルコールや有害物質の分解なども担っていますが、成人男性で約1.5kg、女性で約1.3kgと、体内で一番大きい臓器です。そのせいか障害を受けても自覚症状が出づらく、かなり重症化しないと黄疸や倦怠感などの症状が出ません。それが「肝臓は沈黙の臓器」と言われる所以です。

 長期にわたって肝臓が障害を受ける慢性肝炎が10年、20年と続くうちに、肝臓の細胞が壊死し続けていくため肝臓は小さく硬くなり、いわゆる肝硬変へとなっていきます。そうなると回復することはほぼ不可能で、色々な症状がみられるようになります。それは前記の黄疸や倦怠感以外にも、タンパク質産生不足による全身の浮腫や腹水、また食道静脈瘤が破裂することによる吐血、さらに肝臓がんの発生などがあります。こうなると末期肝硬変と診断され、余命率がかなり低くなります。

 その慢性肝炎の原因のひとつに肝炎ウイルスがあります。A型~E型肝炎ウイルスまであり、そのうちのB型やC型肝炎ウイルスが慢性肝炎を引き起こします。現在は内服治療することでそのB型やC型肝炎ウイルスの活動を抑えたり、ウイルスそのものを排除することが可能となっています。その結果、肝硬変への進展が防げます。しかしまずは肝炎ウイルスに感染しているかどうか確認しなければなりません。

 日本のB型肝炎ウイルス感染者は約140万人、C型肝炎ウイルス感染者は約200万人と言われています。沖縄県内にも多くの肝炎ウイルス感染者がいます。まずは検査を行い、ご自身が肝炎ウイルスに感染してないか確認することが大事です。そのため一度だけでも検査を受けることをお勧めします。県内では各保健所にて無料で受けられます。

 最後に厚生労働省の「肝炎総合対策推進国民運動事業」の活動の一環であるPR動画をご案内いたしますので、ぜひご覧ください。
 ※音声が流れます

 皆さんは脂肪肝をご存知でしょうか。これは肝臓に脂肪が沈着する病態で、主に肥満の方や生活習慣病(高血圧症や高脂血症、糖尿病など)の患者さんにみられます。
 
 お酒をたくさん飲むと肝臓組織に脂肪が沈着し、さらに炎症が加わるとアルコール性脂肪性肝炎となりますが、全くお酒を飲まなくても同じような病理組織を呈することがあるとわかってきました。そこで1980年、アメリカのLudwigという病理学者が非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:略してNASH)と命名しました。現在、日本国内に単純な脂肪肝は約1000万人の患者さんがおり、そのうちの200万人ほどの患者さんがNASHであると推察されています。

 脂肪肝は放置しても問題はなく、肝硬変や肝臓がんとも無縁、と今までは言われてきました。しかし肝硬変さらに肝臓がんへ進展する患者さんが出てきました。そのような方々は単純な脂肪肝ではなく、NASHだったわけです。余談ですが、肝臓がんの原因は、以前はC型肝炎ウイルス由来が多かったのですが、近年はそれ以外(NASH含む)が原因での肝臓がんが増えてきています。

 単純な脂肪肝とNASHとの区別は非常に難しく、血液検査や腹部エコー検査だけではわからないことがあります。その場合は肝生検という、肝臓組織の一部を採取し顕微鏡で観察する検査が必要となってきます(入院を要します)。その結果NASHと診断されれば治療の対象となります。

 治療として肥満や生活習慣病をより厳格にコントロールするのはもちろん、場合によれば内服薬も開始されます。しかし内服薬といっても特効薬はなく、体重や血圧、血糖値、コレステロール値などの生活習慣病の改善が大事で、結局は患者さんご本人に努力してもらう部分が大きいのです。生活習慣を是正するのは楽ではありませんが、本人が知らぬ間に肝硬変や肝臓がんとなってしまう状況が避けられるのです。

 当院でも血液検査や腹部エコー検査で肝機能の精密検査を行っております。また肝生検が必要となれば、提携医療機関へ紹介させていただいています。ドックや健診で肝機能障害を指摘された方は、その他の肝疾患はもちろんNASHかどうかを調べる必要がある場合もありますので、当院までお気軽にお声掛けください。

 何となくおなかが張る、胃がもたれる、みぞおちが痛い、おなか全体が痛い、とくにかくおなかがヘンだ、という方はたくさんいらっしゃいます。そのような症状を訴えて病院を受診し様々な検査を行っても、異常のないことはよく経験されます。これは機能性胃腸症という病態かも知れません。異常は異常でも、目に見える異常を器質的異常、目に見えない異常(臓器の働き具合の異常)を機能的異常と言います。

 人間は加齢に伴い色々なところに不具合ができてきます。その不具合が検査結果として異常と出た場合は対処しやすいのですが、全く異常がないことがよくあります。その場所(臓器)は様々ですが、おなか(胃腸)に症状が出現する機能性胃腸症はその代表格といえましょう。

 おなかに症状があるけど検査で異常はない、というのは昔から全世界でみられていましたが、明確な診断基準がありませんでした。そこで、それまで診断が確立されていた器質的疾患とは異なる病態があるのではないか、と1978年にイギリスのManning氏が報告したのがはじまりです。さらに研究が進み、1988年イタリアのローマで開催された国際消化器学会を契機として1992年にRomaⅠ診断基準が発表されました。その後もこの診断基準に改良が重ねられ、最近では2016年に発表されたRoma Ⅳが用いられています。そのRoma Ⅳの中身ですが、症状により機能性ディスペプシア、食後愁訴症候群、心窩部痛症候群に分類され、いずれも内視鏡を含めた検査所見に異常がなく、6ヶ月以上前から症状があり最近3ヶ月以内は一定頻度の症状発現があるもの、と定義されています。

 治療は内服が主になりますが、既存の胃薬や整腸剤、漢方薬をはじめ、それぞれの症状にあわせた薬が新たに出てきています。これらの組み合わせを試行錯誤しながら根気強く内服していくと、時間はかかるかも知れませんが必ずよくなっていきますので、ぜひ一度ご相談ください。

 ヘリコバクター・ピロリという細菌をご存じでしょうか(いわゆる「ピロリ菌」)。オーストラリアの微生物学者であるバリー・マーシャル氏が、病理学者のロビン・ウォレン氏と共に発見しました(二人とも2005年にノーベル医学・生理学賞を受賞)。その後胃癌と関連することも判明しました。

 感染源は菌に汚染された水(井戸水など)が主ですが、ごく稀に人-人感染もあります(キスやお箸の共用では感染しません)。以前は衛生状態が悪いため感染率が高かったのですが、生活環境の改善とともに感染率は減少しています。年齢でも感染率が違い、現在の10~20代では約10%ですが、60歳以上は60%となっています。また成人が感染しても免疫システムが働いてこの菌を排除しますが、胃酸の力が弱く免疫システムも未熟な乳幼児が感染すると、生涯にわたる持続感染が成立します。

 胃の中は胃酸により強い酸性となっており、本来なら細菌は常在できません。しかしピロリ菌はウレアーゼという酵素を身にまとい、これが強酸である胃酸をアンモニアと二酸化炭素に分解し自身の周囲をアルカリ性に保つことによって、胃の中でも生き続けられるのです。またこのウレアーゼそのものが毒性を持ち、胃粘膜に障害を来します。

 ピロリ菌の感染を調べるため様々な検査がありますが、2017年2月現在は、ピロリ菌による萎縮性胃炎を内視鏡検査で証明しないと健康保険が使えません。そのためピロリ菌の感染を心配する患者さんには、全ての人に内視鏡検査を勧めています。

 ピロリ菌感染が判明したら除菌治療を行います。その際は細菌を死滅させる抗生剤2種類と、胃薬1種類を使用します。身にまとったウレアーゼにより抗生剤が効きづらいため、ウレアーゼを除く工夫が必要です。ピロリ菌は胃酸があるからウレアーゼを産生しますので、強力な胃薬を投与し胃酸の分泌を抑えて、ウレアーゼをなくしてから抗生剤で叩くのです。これらのお薬を1週間内服しますが、抗生剤への耐性を獲得しないよう、最後まで飲み終えるのが大事です。副作用として下痢や味覚異常などがありますが、いずれも内服中だけですので、ひどくない限り中止しません。しかし薬剤アレルギー(主に薬疹)の際は即刻中止とします。

 除菌治療を完遂しても除菌成功率は100%ではありません。抗生剤に対して耐性を持っているピロリ菌が増えたため、以前より日本人の除菌成功率が下がってきているのです。除菌に成功しなかったら抗生剤を変更して再度の除菌治療(二次除菌)を行います。しかしそれでも除菌できない方もいらっしゃるので、三次除菌を行うこともあります(保険診療外)。

 皆様の中で、ピロリ菌に対する不安等がございましたら、お気軽に当院までお声がけください。

 人間が口から食べたものは食道・胃・小腸(十二指腸、空腸、回腸)・大腸・直腸へ流れてきて、最後に肛門から便として出て行きます。この食べ物の通り道である一本の管を消化管と呼びますが、その消化管の内壁が障害されると様々な病気が引き起こされます。そのひとつに「潰瘍(かいよう)」があります。

 消化管の内壁は順に、粘膜層→粘膜筋板→粘膜下層→固有筋層→漿膜層の5層構造ですが(下図参照)、様々な原因でこの内壁が障害され、2番目の粘膜筋板を越えてえぐられた場合に医学的に「潰瘍」と呼びます(ちなみにえぐられるのが1番目の粘膜層までなら「びらん」といいます)。潰瘍は消化管のどこにでも出来るのですが、胃に出来れば「胃潰瘍」、十二指腸に出来れば「十二指腸潰瘍」となります。

 潰瘍の原因は薬剤や喫煙、飲酒、コーヒー、ストレスなどが挙げられますが、今では1982年に発見されたヘリコバクター・ピロリ菌が最も重要視されています(60歳以上の日本人は60%以上の感染率)。また高齢者は様々な薬剤を内服している場合もあり、更に潰瘍形成の危険性が高くなります。また胃潰瘍は胃癌に合併することもあるため、注意が必要です。

 症状としてはみぞおちや背中の痛み、胸やけや悪心、腹部膨満感等があります。十二指腸潰瘍では空腹時痛が特徴です。時に出血を来し、口から血を吐いてしまう「吐血」や、吐血せずに血液が黒い便として出てくる「タール便」がみられることもあります(血液は消化管を流れる間にコールタールのように黒くなる)。これらの症状があれば胃や十二指腸の潰瘍を疑い、内視鏡検査を必要とします。

 潰瘍と診断したら原因の除去に加え、胃酸を抑える薬や粘膜保護剤等を服用します。基本的には外来治療ですが、必要に応じて入院治療を行います。その後も胃カメラで潰瘍の経過を追跡していき、もしヘリコバクター・ピロリ菌の感染が判明したら、その菌を退治する治療も行います。もちろん細胞を調べる病理検査で胃癌の除外も行います。

 皆様の中で、前述した症状がある方はいらっしゃいますでしょうか。もしかしたら潰瘍が原因かもしれません。当院では随時内視鏡検査を行っていますので、お気軽にご連絡ください(電話予約も承っております)。

 皆様の中に胸焼けで苦しんでいる方はいらっしゃるでしょうか。また喉が詰まった感じや苦汁が上がってくる、ゲップが多い、などの症状はどうでしょうか。それらは逆流性食道炎が原因かも知れません。

 食べ物が通過する時以外、食道と胃のつなぎ目は閉じていますが、このつなぎ目が何らかの理由により緩んでしまい、胃で分泌された胃酸が食道に逆流するのです。食道は胃と違って胃酸に弱く、粘膜に炎症が起きると冒頭の症状が出現するのです。

 下部食道括約筋という筋肉が食道と胃のつなぎ目を閉めたり緩めたりするのですが、年をとるとその筋肉の収縮力が弱くなります。さらに胸とお腹の間の横隔膜には食道が通る隙間があるのですが、これも加齢で緩くなり胃酸が逆流しやすくなります。また胃の内圧が上昇しやすい肥満や妊娠でも胃酸が逆流しやすくなり、油っこい食べ物やお酒、コーヒーなどは胃酸分泌を増やします。

 この疾患はもともと日本人には少なかったのですが、食生活の欧米化や肥満の増加、また胃酸分泌を減らすピロリ菌感染率の減少などに加え、高齢化社会になってきたこともあり増えてきました。内視鏡検査での有病率は1980年代には2%台だったのが、2005年には15%近くまで増加しています(日本消化器病学会)。

 内視鏡検査で食道粘膜の炎症を確認できれば逆流性食道炎と診断できます。しかし炎症のないこともあり、その際は問診から胃酸逆流を疑って同じ治療を行うことになります。まず肥満の解消や高脂肪食を控えることはもちろん、食事量は腹八分で抑える、食後すぐに横にならない、飲酒量を控える、服で体を締め付けない、など普段の生活で気を付けてもらいます。また胃酸は就寝時に逆流しやすいため、眠る時は大きめの枕を使って肩から頭の位置を高くする工夫も有効です。同時に胃酸分泌を抑えるお薬を内服することで症状が消失、あるいはかなり軽減されます。普段から胸焼けなどに悩まされている方は、ぜひ内視鏡検査を受けてみてください。

西原町および与那原町役場の待合室にあるテレビ(コミュニティビジョン)で、当院が紹介されています。ぜひご確認ください。
※音声が流れます

城間医院のホームページを公開いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします。